TweetAdderを始めませんか?

ページ

zChocolat (Stylish Elegance chocolates in deluxe mahogany chest box)

2011年10月24日月曜日

ACTA:Anti-Counterfeiting Trade Agreement (模倣品・海賊版拡散防止条約)に続く:The Transpacific Partnership Agreement(環太平洋連携協定)

ACTAAnti-Counterfeiting Trade Agreement (模倣品・海賊版拡散防止条約)に続く:The Transpacific Partnership Agreement(環太平洋連携協定)

模倣品・海賊版拡散防止条約のインクが乾かないうちに、USTR: Office of the United States Trade Representative(《米》連邦通商代表部)はすでに別の通商協定の交渉に入っている。即ち、The Transpacific Partnership Agreement(環太平洋連携協定)である。この協定はモノとサービスにおける通商をカバーするだけでなく、知的財産権(IP)についての規定が含まれている。現在TPPの交渉参加国はオーストラリア、ブルネイ、チリ、マレーシア、ニュージーランド、ペルー、米国とベトナムである。

過去、米国はIP保護の歯車として通商協定を用い、ACTA[1]は最近のおそらく最も酷い例である。DRM[2]を外すのは違法であるとするような米国国内の法律[3]を国際的ルールとして成文化し、貿易相手国の政府に国民にとって最善の利益とならないIP条項の採用を迫るものである。通商協定の形を借りてこのようなIPへのアプローチの危険を孕むものがTPPである。

TPP10IP(知的財産権)に対するコンテンツ産業[4]の見方

コンテンツの所有者達はコンシューマーの利益を犠牲にしてまで彼らの利益を積極的に保護するIP条項をTPPに盛り込むように働きかけを行っている。
米国事業連合(U.S. Business Coalition)がTPP用に作成したペーパー(米国研究製薬工業協会 Pharmaceutical Research and Manufactures of America、米国商工会議所、米国映画協会 Motion Picture Association of Americaにより起草された)がインターネット上でリークされているが、そのペーパーにはコンテンツの所有権者がUSTRACTAでの現状の保護以上に広範な知的財産権の保護条項をTPPに含めるように迫っている記載がある。
具体的には、以下の事項がTPPに盛り込まれることを提案するものである。

1)    一時的なコピー(Temporary copies:
米国事業連合のペーパーではTPP参加国に一時的なコピー(temporary copies)に対する保護規定を含めることを強く求めている。一時的なコピーとはインターネット上のウェブページ、音楽やその他のコンテンツにアクセスする際に行われるコピーを意味する。加えて、コンテンツを再生する過程でコンピュータがバッファーにデータをコピーするがそのようなトランジェントなコピーはどのように使われようと(映画を観たり音楽を聴いたり)そのコピー自体は価値がない。それらを著作権の保護に値するとみなしてコンテンツの所有権者が何ら制約なく追加の使用料を請求できるようにする。

2)    デジタルロックの無効化(Circumvention of digital locks):
ペーパーではTPP参加国にデジタルロックの無効化(circumvention of digital locks)防止を強く求めている。著作権に関する世界知的所有権機関条約(WIPO Copyright Treaty)、実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約[5]WIPO Performances and Phonograms Treaty “WPPT”)は条約加盟国にこの義務を課す最初の国際協定であった。これらの条約を基に米国国内においてデジタルミレニアム著作権法Digital Millennium Copyright Act (DMCA)が制定された。DMCAによる反無効化条項により生じる弊害はこれまで多く報じられてきた。簡単に言えば、DMCAは一方でデジタルロックを破ることを禁じることで著作権侵害を防ごうとしておきながら、他方では正当な使用も禁じてきた(例えば、購入したDVDLinuxで動くコンピュータ上で再生する為にそのDVDのデジタルロックを破ることを禁ずるということ)。

3)著作権の保護期間(Copyright terms):
ペーパーは、より長い著作権の保護期間をTPPに強く求めている。現行の米国での著作権の保護期間は著作者の死後 70年とされている。知的財産権の国際的な取決めのベースラインとなっているTRIPs協定は著作権の保護期間を著作者の死後 50年とすることを求めている。ペーパーでは全てのTPP参加国はこの最短期間よりも保護期間を長くすべきと示唆している。しかし、この長さの商業上のライフスパン(賞味期間)を有する作品はほとんどない。たとえば、書籍は著者の死後70年も経たないうちに内容が時代遅れになる。同様に、音楽や映画も著作権の保護期間が終わるよりもずっと前に商業的なアピール性を失っている。著作権者は商業上のライフスパンが終わってしまった(賞味切れ)の作品については関心がない。作品はそれと認識されなくなり、その作品に関心を持つ歴史家・教育者・ドキュメント作者たちがいて、著作権者に使用許可を求めようにも著作権者を探しようもない場合は珍しくない。これらの人々は、適正な著作権の保護期間の見直しは是とするが、その期間の延長は是としない。

3)    法定損害賠償(Statutory damages):
ペーパーは、米国法定損害賠償制度(U.S. statutory damages regime)と見かけの上では類似する法定損害[6]に関する条項を含めることをTPPに強く求めている。この従前の制度の下では過度に大きな損害賠償につながるケースが多いことが指摘されている。この制度は結果として、フェアユース(fair use[7])を拠り所とする使用を思いとどまらせ、数百万ドルの訴訟の恐れをして、イノベーションの息の根を止める結果となっている。

米国事業連合は他に多くの気がかりな提案をしている。例えば、インターネット接続業者に著作権の番人の役割を要求し[8]、大掛かりな海賊行為と同程度の厳しさで個人の侵害者を扱うといったことである。

全ての国が同じ認識ではない

幸いにも、TPP交渉参加国のうちの幾つかの国では商業協定にIP条項を扱うことについて懸念を有しているようだ。ニュージーランド政府の内部文書がインターネットにリークされているが、そこでは、ACTAと類似するIP章を受け入れることについては口を閉ざしている。
IP保護の費用と経済効果を分析すると、我々の社会の全てにおいて特に、著作権と特許権の分野において、IPが過度に保護される傾向が示されている。好適な保護の程度は国によって異なるし、その程度は国ごとに別々の経済発展のステージを考慮すれば異なるものである。”

この文書はさらに、それぞれの国が自国民にとって最適になる独自の政策を決定する力を多国間の政策立案がいかに制限するかについて述べている。
“より多くの問題を国際化し国レベルでは限界のある問題の国際的な解決を図ろうとする権利者からの圧力の高まりがこの経緯をもたらしている。これは特に著作権の分野では当てはまる。そこでは権利者が著作権問題の範囲に関して、より介入的な国際ルールの採用を当初から模索してきたからだ。”

この文章では米国国内においてデジタルミレニアム著作権法のもととなった著作権条約(WCT)と世界知的所有権機関条約(WPPT)を未熟に採用された政策の実例として挙げている。現在の国際的なIP政策が現実の問題にいかに対応していないか、見直されるべきかに言及している。デジタルロックを破らないことを条約国に求めるそれらの条約に関して、
“デジタル・コンテンツ市場の発展は、DRMを介して著作権を行使するのではなく、インターネットユーザの振る舞いを制度化する方向に関心が高まっている。このことは、WCTWPPTもオンライン環境での創造的な投資の複雑さを反映しておらず、イノベーションを促す役割に問題があるということを示している。”

通商協定でのIP章の実質的な問題に加えて、(TPPの)これらの協定が秘密交渉であること、市民社会グループにこれらの問題に関与させる必要もないことを、この文書は明らかにしている。

ニュージーランド政府のように、米国政府も国内のIP政策とこれらの問題の国際的な関与を見直すべきであろう。現状の著作権法は多くの面で米国の消費者、家電メーカーやインターネット・サービス・プロバイダーを害するものである。米国が他国にそれらの問題を持ち出すことは、これらの政策を維持し、いかなる改革を行うことも妨げる米国に他国は拘束されることになる。

USTRが上述のようなペーパーを出した上は、TPPではIP章が存在しないことを願うとともに、TPPIP所有権者に代わって全ての者の利益を反映すべきであろう。加えて、ACTAの再現にならないように、交渉のプロセスは透明であるべきだ。

以上
(translation and annotation by R. Enomori)
By Rashmi Rangnath on January 4, 2011


[1]これまでは、1995年に発行された、WTOにおけるTRIPS協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定:Agreement on Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rights)があった。TRIPS協定は、国際的な自由貿易秩序維持形成のための知的財産権の十分な保護や権利行使手続の整備を加盟各国に義務付けることを目的とした多国間協定で、WTOの規定によって加盟各国は協定の内容を各国の法律に反映させなければならない。協定に違反した場合、WTOの中の紛争解決機関(DSB)に提訴し、違反措置の是正を求めることが可能で、是正が勧告された場合、応じないと制裁措置をとることができる。このTRIPS協定によって、現在、模倣品や海賊版の輸入は禁じられているのだけれど、再犯の防止策や輸出に関する国際的な取り決めはなかった。そこで、2006年に、日本と米国が、模倣品・海賊版への対処を支援するための複数国間の新たな条約、いわゆる模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)を提唱し、2006年から2007年にかけて、カナダ、EU、日本、スイス、米国間でACTA に関する予備的な議論を実施。20086月には、オーストラリア、カナダ、EU及び27加盟国、日本、メキシコ、モロッコ、ニュージーランド、韓国、シンガポール、スイス、米国で交渉が開始され、2011101日付で日米など8カ国が署名し、今後各国で批准などの手続きが進み、来年中に協定が発効する見通し。
[2]DRMDigital Rights Management】デジタルデータとして表現されたコンテンツの著作権を保護し、その利用や複製を制御・制限する技術の総称。具体的には海賊版の制作を防ぐために音楽とか電子書籍とかにつけるプログラムのこと。アマゾンの電子書籍をソニーの端末で読めるように、ユーザがDRMを外して電子書籍のフォーマットを変えること(アクセスコントロールの私的利用目的での回避)を違法とするデジタル・ミレニアム著作権法(DMCA)がある。本来正当なものとして認められるべき著作物へのアクセスまで阻害され規制されるとなると、必然的に企業や大学等における研究・技術開発まで不当に阻害されることになるとの畏れが指摘されている。
[3] デジタルミレニアム著作権法Digital Millennium Copyright Act (DMCA).. WIPO(世界知的所有権機関)で締結された「著作権条約」「実演・レコード条約」に基づき制定されたもので、デジタル化された情報の著作権のあり方などを規定。
[4] コンテンツ産業(Content Industry)とは文書・音声・映像・ゲームソフトなどの情報の内容に関する産業
[5]録音や録画、または生放送されたパフォーマンスをWeb上で無許可利用することを禁じるWIPOによる国際条約
[6] 米国著作権法第504条侵害に対する救済/損害賠償および利益:著作権者は侵害者に対して、「現実的損害および利益」又は「一の著作物に関して当該訴訟の対象となる全ての侵害(一人の侵害者は単独で責任を負い、二人以上の侵害者は連帯して責任を負う) につき、750 ドル以上30000 ドル未満で裁判所が正当と考える金額の法定損害賠償」の支払いを選択できる。
[7] 著作物の使用(複写等)において著作権侵害に当らないとする諸条件。米国著作権法上の規定。
[8] 裁判手続きなしに、プロバイダーにネット接続のフィルタリング、切断、停止を実施させる。処罰対象とされる海賊行為の中身の精査はしない。


0 件のコメント:

コメントを投稿