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2010年12月8日水曜日

排出権取引における埋炭について

森林資源/森林事業を第二次/第三次産業に直接結びつける、新たな経済システムの提案


1. 排出権取引における埋炭と問題点 

 排出権取引における埋炭(大気に排出される炭素の土中への固定)がここ数年話題になっています。埋炭が経済紙の一面に載り、排出権取引における意義と価値が様々に報じられています。
 埋炭などの炭素の土中への固定は工場などからのCO2排出量をオフセットする「カーボンオフセット」でのクレジットとして排出権取引に将来組み込まれる経済活動要素の可能性があります。排出権取引に将来組み込まれる経済活動要素となれば、森林資源/森林事業の新たな可能性を市場は要求することでしょう。
 安価な輸入材の流通/集成加工技術による輸入材の材質のバラツキ減少などにより、国内産の木材の市場性は今後一層低くなることが見込まれています。また、市場原理でなく公的補助によって専ら支えられている森林事業の市場性/競争性/収益性には疑問符がつきます。
 そのような状況で、おそらく、多くの林業従事者、木炭製造者が埋炭に将来の新たな可能性を見出そうとしているのではないかと思います。しかし、今のところ、排出権取引において埋炭の意味や経済活動としての位置づけが今ひとつはっきりしないというのが実感と思います。
 排出権取引で炭素固定はそれに用いる技術と固定化までのプロセスが明確で且つプロセスにかかるコストと比較して固定の効果が高いものほど、取引市場で評価を受けやすい状況にあります。
 排出権取引で埋炭をクレジットとして考えられやすいのは欧米の事例です。欧米の埋炭は主に、落花生や小麦の殻といった大量に生じ収集と炭化に手間やコストがかからない農産物の廃棄物を前提にしているので、埋炭だけで十分に排出権取引のクレジットとして市場価値を得られるという事情があるからです。
 他方、わが国の場合は、埋炭の材料は森林経営活動を行っている森林の資源(育成林)に期待が集まっています。ところが、その資源には育成・切り出し・運搬から炭化までに多大な労力とコストがかかっています。したがって、そのままクレジットとして排出権取引市場に出しても利益どころか足が出てしまいます。


2. 埋炭に加えるべき+α要素(意義) 
 埋炭が排出権取引市場で高い価値評価を受けるには(又は排出権以外の市場価値を得るには)、市場評価に応えられる、炭素固定とは別の+α要素(意義)を付加する必要があると考えます。
 この+α要素(意義)を考える上で、参考になるのがアジサイです。アジサイがpH(水素イオン濃度指数)、アルミニウムイオン量などの土壌中の要素やそのアジサイが育成している場(光量/温度/湿度など)によって花弁の色を変えることはよく知られています。それらの要素や場を色という情報で発信していると考えることができます。それら要素や場を変えてアジサイの色を変える発想を逆にすると、アジサイの色からそれら要素や場を知る発想になります。
 埋炭によって土壌のpH(水素イオン濃度指数)を変えることは、土壌環境を改良する目的の発想です。アジサイの例での逆の発想に喩えてみると、埋炭によってその場を知ることができるか?ということになります。
 アジサイは花弁の色で知らせることができるように、杉をはじめとする育成林の樹木についてはその育成している場の様子をセンサで知らせることはできないか?また埋炭がそのことに貢献できるか?ということになります。
 埋炭によって土壌環境を改良することは普通に行われていますが(土壌改良材として)、埋炭によって結果として情報を得るプロセスは未だ誰も試みていません。
 樹木についてセンサで樹勢やその樹木の育成している場を知る取り組みは、環境発電技術(自然界環境に存在する微弱な電位差を電気エネルギーへ変換(発電)する技術)を樹木に適用して樹木自体が発電し、その微弱電力でセンサを働かせることですでに始まっています。
 樹木と土壌のpH(水素イオン濃度指数)に差がある(つまり電位差がある )ことに着目した「樹木発電(僅か20mV)」の理論と実証実験が、米University of Washington(Seattle)の研究グループ、米国農務省森林局およびベンチャー企業であるVoltree Power社との間で進行中です。
 





 Voltree Power社の特許申請中のバイオエナジー・ハーベスティング技術では、樹木の代謝エネルギーを利用可能な電力に変換し、微弱電力で駆動する回路と送信機によって、各樹木の温度と湿度を中継ステーションに送信し、中継ステーションから人工衛星を経由しモニタリング・システムにメッシュ情報として集めるものです。
 以下の写真にあるように、森林の乾燥度などのパラメータを集めて、火災発生の危険度を自動的に表示するシステムが稼動中です。







 環境発電技術を適用して樹木自体が発電し、その微弱電力でセンサを働かせるということです。しかし、この取り組みでは埋炭は要素になっていません。
 そこで、埋炭がこの取り組みの要素となり得ないか?もう一歩考えを進めてみました。
埋炭を要素として加え、樹木の土壌との間の代謝エネルギー(例えば水素イオン濃度の差)を増やし、結果としてVoltree Power社の技術よりも多くの電力を取り出す技術を確立できれば、更に多くのセンサを働かして(例えば、蒸散流センサなど)、より多くの情報を得ることが可能になるものと考えます。つまり、埋炭が樹木と土壌のpH(水素イオン濃度指数)の差(つまり電位差)を高め、環境発電技術(エナジー・ハーベスティング)などの新技術への橋渡しの要素となり得ないかということを考えてみました。埋炭によって環境発電が可能になれば、その場を知るための様々なセンサを動かして情報を得ることが可能になります。個々の樹木の樹勢や伐採時期(例えば、センサとして役目を終える時期)、さらには森林全体の環境や気象を判断する情報を得ることができれば、効率的な森林の管理だけでなく、生態系全体に対していかに対応をすべきかをそれら情報から知ることができるのではないでしょうか?


 樹木と土壌のpH(水素イオン濃度指数)差を大きくすることに埋炭が寄与するならば(実証要) 、埋炭の+αの価値として、環境発電技術(エナジー・ハーベスティング)の可能性を市場に図ることが可能と考えます。ちなみに、水素イオン濃度の差のエネルギーを電位差で示すとpHの差 1に対して電位差 59 [mV] と計算されます(膜電位のナトリウムイオン移動の場合)。


 埋炭に用いる木炭が高温炭の場合はアルカリ性なので(低温炭で残留していた酸性を示すカルボキシル基などが還元分解され、カルボニル基を主とするアルカリ性となる為)、例えば、埋炭を施した根圏土壌の上部は根の炭酸化作用が現れている部分でpHは酸性に振れているが、埋炭部を含む非根圏土壌部ではpHはそれよりもアルカリ寄りです。なお、根圏土壌から非根圏土壌の間のpHが中性辺りの土壌では、根と共生して養水分の吸収を助ける菌根菌(「植物は根を有するのではなく、菌根を有するのである」)が宿生します。木炭にはこの菌の生育を阻害する物質を吸着する性質があるので、非根圏部に埋炭を行うことで、根(菌根)は埋炭部を目指して根圏部を広げることも期待できます。即ち、樹木の根(及び菌根菌)が埋炭部に貫入し根圏として取り込むまでは、根圏部と埋炭部にはpHの差があると考えられます。
 また、根圏土壌の上部以外の外的な酸性要件としては、樹木の葉や枝、幹を伝って地面に落ちる雨(林内雨や樹幹流と呼ばれるもの)があります。即ち、それは林外に降る雨と比較して酸性のpH(3.8-2.9・観測平均値)及び高いEC値(電気伝導度)を示します。これは、化石燃料などの燃焼で生じる大気中の硫黄酸化物や窒素酸化物などが、樹木の葉や枝に付着したものと併せて雨とともに地面に落下するためとされます。杉は元来耐酸性樹木ですが、近年、中国の工業化の進展に伴って大気に排出される硫黄酸化物や窒素酸化物が風に運ばれて日本に大量に到達することもあり生育に影響が出ています。また、本来、枯れ木にしかつかない樹木腐朽菌やそれを媒介する病害虫(キクイムシ)が近年、生木(特にナラ類樹木)につくのも、この外的要因が疑われています。即ち、樹木腐朽菌(糸状菌類)は台風などが原因で傷んだ樹木の箇所に侵入し、酸性雨に洗われてアルカリ度が低くなった箇所から菌糸を樹木の内部に侵入させるためとされます。


 埋炭によって結果として情報を得るということは地球環境保全に重要な役割を果たす森林について考えれば、森林から科学的なデータの収集・分析し、それらに基づいた森林を含む生態系への対応を意味します。
 「場を知る」ことが温室効果ガス排出量削減にどう貢献するかについては、その目的でどのように森林を含む生態系に対応するかにかかっています。たとえば、バイオテクノロジーを用いてその場の環境に対応して炭素固定能力を向上させた植物を生態系に組み込むなどの対応があれば、「場を知る」に用いた埋炭に排出権取引において何らかのクレジットが将来考えられるかもしれません(現状はそのようなクレジットはありません)。


 いずれにせよ、こういった「場を知る」取り組みと、炭素固定の意味での埋炭はその場(森林)とその方向(地球環境保全)は同じであるにも関わらず、今のところ互いに用い方の接点がありません(「幸いに」とも言った方が良いかもしれません。まさにここにチャンスがあると考えます)。ここに何らかの接点を見出すことができれば埋炭に「場を知る」という新たな意味と可能性を提示することができるのではないかと考えました(埋炭によって情報を得ることの可能性)。

3. +α要素(意義)とは?


 従来、「埋炭」は「土壌環境の改善」や「イヤシロチ(地電位の改善)」といった「場を提供する」こととして理解されてきました。
 この「場を提供する」を「場を知る」に置き換えて考えられないかということです。
 「場を知る」ことには将来の科学技術/人/カネ/市場があります。なぜなら地球環境保全という全世界的な大命題がその背後にあるからです。したがって、従来の「場を提供する」に比較して、その必要性、将来性、市場性は格段に大きいものがあると考えます。


 具体的には、樹木と土壌との間で元々存在するpH(水素イオン濃度指数)の差について、埋炭がさらにその差を高め、水素イオン濃度の差のエネルギーを電位差として環境発電技術に適用し、結果得た微弱電力で樹木に取り付けたセンサを作動させ、樹木や森林のモニタリングおよびそのデータ活用といった場を知る可能性(+αの要素)を示すことができれば、その先の技術と市場への見通しが立ち、埋炭の排出権取引のクレジットの価値を高めることができるばかりでなく、+α部分であらたな事業の可能性が示せるのではないかということです。「イヤシロチ(地電位の改善)」の場合のように数十キロ/百キロ単位の大量の埋炭でなく、樹木の根圏土壌と非根圏土壌の境界で、環境発電技術によってセンサの稼動に必要な僅かの代謝エネルギー(水素イオン濃度)の差を生み出せる数キロ程度の埋炭で良いかもしれません。樹木や森林のモニタリングを目的とするので、一本当たりの埋炭量はこの目的では少なくても、観測点分の膨大な量の埋炭需要が見込まれます。


 炭素埋設だけの観点では、山野に炭を撒けば良いだけの話でそれ以外にあらたな事業の可能性は見出しにくいところです。+α部分があれば、埋炭によって生態系の情報とそれに適用すべき技術の可能性をその場から知ることができるわけです。炭を情報に変えることを森林事業の新たな可能性として考えることができます。市場が将来性を評価する事業や技術をながめてみると、情報産業につながるものが多いことに気づきます。
 たとえれば、鉱石を単なる鋼材として売っても情報にはなりませんが、半導体にして売ればその先には情報に関連する事業や技術の可能性があります。


 たとえ+α部分自体が排出権取引のクレジットの価値に反映しなくても、排出権取引市場以外の市場で価値を得て事業可能性を見込めるかもしれません。地球環境保全において重要な要件である森林を窓にして地球環境を科学的に考察する必要性は今後増大していきます。地球環境を知るための窓としての森林に「場を知る」ための技術とその為のカネが次々と投入されることでしょう。従来の木材を50年に一度提供する樹木(たとえば杉)からセンサとして情報を日々提供する樹木へ、が時代の求めるものであると考えます。木材という成果物の育成期間と経済活動が許容する時間/コストがかけ離れていったのが従来の森林事業(育成林)であり、そこに森林経営の解消されない困難さがあります。木材を情報に置き換えて、日々売買できる情報という成果物であれば、その差を大きく縮めることができます。つまり、経済活動地球環境保全といった大命題を言わずとも、森林経営にとっても個々の樹木の樹勢、地形に応じた気候のデータを得ることによって、計画的且つ効率的な森林の整備を図ることが可能になるでしょう。

4. +α要素(意義)に必要な技術/科学、とそれら伴う経済活動


 「場を知る」ための技術として、環境発電技術(エナジー・ハーベスティング)と生態系適応科学は重要な要素となると考えられます。前者は第一次産業と第二次産業を直接結びつける技術革新(鉱石と半導体の関係と同じ)であり後者はその応用(半導体とデバイス/システム/ソフトウェアの関係と同じ)です。つまり、鉱山から産出された鉱石が単なる鋼材になるのではなく、半導体になることで、最終的にはソフトウェアといった応用分野の技術(情報産業)まで裾野を広げることができ、鉱山を始まりとする広大な経済システムが構築されることになります(例:レアメタルから燃料電池/その制御システム/ソフトウエアへ)。


 森林資源で言えば、森林から産出された木炭が単なる炭素固定目的の埋炭に用いられるのではなく、環境発電技術の要素となって、最終的に生態系適応科学といった地球環境保全を目的とする「場を知る」科学技術およびそれに付随する経済活動を後押しできれば、森林を始まりとする今までにない経済システムが構築されることになるわけです。


 「場を知る」ということであれば、観光事業やグリーンツーリズムまでもその新たな経済システムに含めることができるかもしれません。たとえば、森林の個々の樹木と携帯電話を通信させて、様々な情報(記録された情報/センサで受信した情報)を樹木とやり取りできるようにする(樹齢・樹勢や種類、道標や行路のマッピング、緊急情報・気象情報の通知など)といったことです。木々を通過ポイントにして、あらかじめ決められた行路をたどると(グリーンツーリズム)、その土地の物産や観光について特典を付与するといった目的でも使えるかもしれません。このことは、後述の多様性のある森林形態への理解につながります。またこの目的では、外部の微弱な電磁誘導にて通信可能なフェリカ(Felica)のようなICカードを携帯電話の代わりにしても良いかもしれません。

5. 具体的に発想すること


 環境発電技術(エナジー・ハーベスティング)と生態系適応科学を、埋炭を中心に形にするには、埋炭を容易にし、且つそれらの目的の為の方法や敷設資材(キット)の開発も必要と考えます(病原体と検査キットの関係と同じ)。また、どのようなデータを取得し、通信によっていかに集積するかといったシステムの開発も必要とされるでしょう。
 たとえば、樹木の根(及び菌根菌)が埋炭部に貫入し根圏として取り込むまでの期間(根圏部と埋炭部の間で代謝エネルギー(水素イオン濃度)の差が生じる年月)を敷設資材(キット)の素材、構造や埋炭の施工法で調整できれば、その期間内は取り付けを行った樹木はセンサとしての情報を提供し、その期間を終えた時点でその樹木を伐採し木炭にして新たな敷設資材(キット)に使用するといった経済活動のサイクルが考えられます。センサからの情報に市場価値をつければ(例えば、山単位/尾根単位のメッシュの気候/気象データを提供するなど)、経済活動のサイクルを回すだけの人とカネを市場から調達することが可能と考えます。従来の木材を提供するサイクルと比較すると格段に短いサイクルを計画することが可能です。
 また、かかるサイクルは、木材産出を目的とする従来型の単一種による植林/育成林から、水資源のかん養(緑のダム)といった国土の保全を目的とする多様性のある森林形態に新たな植林から順次切り替えるサイクルにもなります。杉花粉症に悩む多くの都会人からは根本対策として支持を得られることでしょう(地方の森林に対する施策で都会の有権者の関心を引くものは少ないが、杉花粉に悩む私の友人たちによると、もし具体的に地方の森林に根本対策を公約する政党があればそれだけでその政党に投票や献金するとのこと)。政治家にとってもこのサイクルを具体化できれば多くの支持を都会の有権者から取り付けられるので、具体的に発想する場合は政治力に訴えることも必要かもしれません。親のアレルギーはその子どもでさらに強く発現する可能性があるので、根本対策(育成林の植生の切り替え)には短いサイクルとする動機付けが必要です。上述の発想は短いサイクルで行うことの有効な動機付けになります。


 開発に要する技術については(国際)特許の取得も考慮されると良いと思います(それまでは技術情報は守秘が必須です)。特許権(又は特許出願中である事実)は市場(国内に留まらず、国際的な市場)での価値判断に重要な要素となるからです。上述のシステムを採用しようとする森林事業者から関連する特許技術については使用料を取ることができるからです。特許は前述の経済活動のサイクルを回すに足る人とカネを市場から調達する原資になります。


 『場(「土壌環境の改善」や「イヤシロチ」)を提供するための埋炭から、場(「生態系の適応力を知り、対応をすること」)を知るための埋炭へ』は、突飛で非現実的な話に受け取られるかもしれませんが、それが「突き抜けた」発想の転換があると感じるところです。
 この意味で、従来の経済システムでは第二次産業と直接の関わりがなかった「場(森林)」と「材(木炭)」をまさに有する山村から、第二次、第三次産業への直接関わることになる新たな経済システムの礎となるような「知る」発想を行う意義は大きいものがあると考えます。

6. むすび


 楢崎皐月氏の研究(似非科学とする人が多いようですが)に始まり、埋炭それ自体の意義は地電位の改善として理解され、適用する場を変性することを目的に営々実践されてきました。その効果は個々の実践の場で確認されてきました。しかし、マイナス・イオン(イオン化)、癒しといった効果の漠然とした表現から、ともすれば非科学的/思想的なイメージを埋炭が惹き起こすことも事実です。「良さそう」といったイメージはありますが、「良い」とするだけの科学的・技術的なディテールに対する評価が一般の市場でなされているとは言えません。市場の傍流(ニッチ)にあっても本流に乗り切れない状況がここにあります。
 埋炭の将来を考える場合、一般に膾炙される経済システムの中心にどうやったら埋炭とそれに関係する事業者およびその属する地域並びに経済を位置づけられるかが課題になると思います。換言すれば、いかにすれば埋炭が市場の本流で需要と評価を得られるかということになります。そうでなければ、経済活動で森林資源(育成林)を計画的に木炭に加工し、市場で取引することはできません。ある経済サイクルで森林資源にカネと人を還流させるためには、埋炭の市場性を新たな観点から高める必要があります。
 CO2排出権取引での炭素固定の意味での埋炭は、市場の本流で評価を受けることができる可能性の一つです。あらたな経済システム/経済活動のサイクルをここで見出すことが可能です。ただし、市場は、常に新たな科学と技術を期待するものですから、埋炭についても、炭を撒いたり埋めるだけではそこから新たな科学や技術が生まれるわけでもないので、それでは市場の評価は高まらないと思います。又、先に述べたとおり、農産物の廃棄物を利用し炭化に手間やコストがかからない他国の埋炭と比較すれば、森林資源(育成林)を頼りにした埋炭そのものに市場性を求めるのは困難です(特に国際間の排出権取引では)。埋炭に+α要素(意義)を加える必要があります
 CO2排出権取引の背景は地球環境保全であり、それは環境の改善ではなく、環境や生態系への適応である点に注視しています。適応のためには環境や生態系を広く正しく知ることが必須で、そのための科学技術と市場の将来性に注目が集まっています。


 埋炭に立ち返れば、この「知る」につなげる部分が+αの要素(意義)と私は考えました。CO2排出権取引で「知る」がたとえクレジットとして扱われなくとも、この+αの要素(意義)を見出せば、地球環境保全という国際的な大命題の下で、新たな科学と技術を得、そこで新たな経済システム/経済活動のサイクルを立ち上げることが可能と考えます。
 具体的な+α要素は、木々自身が環境発電にて得た電力でその木々に取り付けたセンサを作動させ、木々自体が発する情報、木々が受け取った環境や生態系の情報をそれら木々が発信し、その情報を遠隔で集積・分析することによって、広く正しく環境や生態系を知り、それらに適切に対応することを可能にする要素です。新たな技術としては、微弱電力を生み出す環境発電装置その装置に使われる埋炭、微弱電力で作動するセンサと発信装置などがあります。また情報を提供する過程では情報自体に様々な用途と価値をつけることができます(例えば、上述の観光事業やグリーンツーリズムまで用途を広げることも可能です)。また、そこで生まれる新たな技術および技術開発の可能性を市場に示すことで森林資源にヒトとカネを引き寄せ、結果として森林に対する適切な対応を可能にします。即ち、それは水資源のかん養(緑のダム)といった国土の保全を目的とする多様性のある森林形態に短いサイクルで戻していくことであり、その形態での森林経営をあらたな経済システム/経済活動のサイクルの中で営々と続けていくことにあります。地球環境保全という大命題を背景に+α要素を含む新たな経済システム/経済活動のサイクルを具体的に示すことで、企業からの協賛や環境活動に関わる非営利団体からの協力を得やすいと考えます。


 これら+α要素を含む新たな経済システム/経済活動のサイクルは、「知る」場である森林とその森林資源を抱える山村を中心に考えることに意義があります。この意味で「場(森林)」と「材(木炭)」をまさに有する山村からこのような「知る」発想を行うことに大きな意義があると考えます。地方を離れ、都会で働きながら職を失っても地方に戻ることができない人々の働く場を、あらたな経済システム/経済活動のサイクルで地方が担うことができれば、素晴らしいことです。


 「知る」べき場は世界中の森林であり、その場に適応する技術と市場の大きさは計り知れないものがあります。CO2排出権取引が国際間の取引となる点を考えても、埋炭の「知る」につながる意義(+α要素)での経済システム/サイクルが、森林資源を持つ山村を中心としつつも、その地域にとどまらずに国際的な広がりまで期待できる点で「突き抜けた」発想であると考えます。+α要素に用いる技術発明について国際特許を取得すれば、その発明の実施に当たっては国際的に権利を行使(ライセンス許諾によるロイヤリティなど)することが可能です。

林野庁/農林水産省の提唱している「森林バイオマスプロジェクト」を待つまでもなく、近い将来、企業が排出権取引の観点から森林事業に直接乗り出す可能性があります。CO2のオフセットの観点や地球環境保全の取り組みは今後、いずれの企業にも求められるからです。

中間山地を有する地方自治体においても、従来型の工場誘致(資源を導入する)から、自らの森林資源を上述の「場を知る」ことを目的に企業に提供する(又は貸し出す)といった新たな型の企業誘致へと、考え方を変えてみることも必要でしょう。

国土の大半を占める森林資源に新たな場と将来の可能性を一考すべきなのかもしれません。


by E. Enomori (なお、本内容の引用/参酌は自由ですが、事前にコメント欄にその旨をご連絡願います。)

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