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2010年12月21日火曜日

中国の渉外特許代理機関(渉外特許事務所)との間で特許出願を行う際の注意点

中国の渉外特許代理機関(渉外特許事務所)との間で特許出願を行う際の注意点
(内外事件=日本から中国への特許出願 / 外内事件=中国から日本への特許出願)

「国家知的財産権局は公告を発表して、北京国林貿知識産権代理有限公司(知識産権=知的財産権、公司=会社)等の19の特許代理機関を渉外特許代理機関に指定した。これをもって、中国の渉外特許代理機関は188箇所に達した。(20087/© 2009 中国知的財産権情報)」

外内事件:
1. 与信管理について
新たに渉外事件を扱うことになる事務所/クライアントと仕事を行うに当たっては先ず、与信管理を十分に行う必要がある(中国には「三角債」なる慣行が特に企業間で残っており、いかなる場合でも渉外特許事務所がクライアント側の費用を立て替えて支払ってくれるかを確認しておく必要がある)。安全のためには、手続に先立って事務所/クライアントから着手金をもらうなり、一定額を常に銀行口座にデポジットしてもらうなりの提案もあり得る。

2. 基準明細書について
基準明細書を英語とするか、日本語とするか?中国語で基礎出願やPCT出願をしたとしても、中国語で明細書を読み書き可能な日本の代理人は少ない。したがって、現地渉外特許事務所/クライアントと明細書の中身についてやり取りするにあたって、どの言葉の明細書をお互いの基準とするか事前に決めておく必要がある。日本以外の国にも同じ発明を出願しているとすれば、英語での明細書を以ってやり取りするのが良いと考えるが(補正箇所の参照が容易)、日本出願用に現地渉外特許事務所/クライアントが日本語明細書を作成している場合は日本語を基準にできるが、中科専利事務所http://www.csptal.com/ja/index.aspのように歴史的に日本語部がある事務所ばかりとは限らず、日本語基準はかえって危険かもしれない。

3. 字体について
簡体字は日本において相当する漢字が存在しない/判らない場合があり、PCT出願の願書上の簡体字による出願人/発明者の名称・住所の表記は、国内書面作成時に時に困難を伴う。ピンインにて元から表記してもらえれば、カタカナにて表音するのみなので楽なので、そのように渉外特許事務所に依頼しておくと良いかもしれない。

内外事件:
1. 翻訳について
中国に出願をするために日本語なり英語の明細書を元に中文に翻訳する作業を現地渉外特許事務所に依頼することが多いが、果たして正確に中文に翻訳されたのか否か確認することは困難である。誤訳だらけの明細書で出願/審査/許可されるケースが実際にはかなりあると聞いている。権利行使時に思わぬ事態になることがある。翻訳の精度はいかなるシステムで担保するのかを現地渉外特許事務所に事前に確認しておく必要がある。
誤訳を防ぐための具体的な対応策(日本側でできる)としては、
     元になる日本語を正しく記述する。
     略語を使わず専門用語は英語も付記する。
     英語→中国語の翻訳者のほうが多いため、英語から中国語に翻訳する。
     翻訳文を別の翻訳会社に逆翻訳させるダブルチェックを行う。
     技術が分かる中国人スタッフを採用してチェックする。

2. 香港での権利取得について
香港との知的財産権についての一国二制度主義により、特許制度上、香港では英国出願又は欧州特許出願(英国指定)の確認特許制度が残っている。そのため、中国出願に基づき香港で特許を取得するルートと並存することになり、香港地域においての権利取得について、どのルートに拠るべきか、旧宗主国の英国系特許事務所を選ぶべきか、中国本土の事務所を選ぶべきか迷うところである。また、特許・実用新案・意匠は知識産権局専利局の管轄であるが、商標は工商行政管理総局工商局の管轄といったように管轄官庁も異なるなど、他国と異なる点が多い。制度上の落とし穴を良く熟知した渉外特許事務所の選択を心がけたい。

3. 台湾と中国の出願を行う場合について
台湾と中国に出願を行う場合、中文とは言え、繁体字と簡体字(書体及び表現)の違いがあり、二重に翻訳を要する。台湾の代理人の多くは(例えばウンピン事務所http://www.wenping.co.jp/)中国本土への出願を請負って(本土の代理人とコネクションがある)、簡体字且つ中国出願仕様の明細書作成が可能であるが、中国本土の代理人でその逆を行う例は少ないと聞いている。この点で渉外特許事務所で台湾案件を取り扱えるのかは事前に確認が必要である。

4. 情報管理について
情報漏洩やリバースエンジニアリングが横行すると言われている中国では、契約書の文言以上に、物理的なリスク管理が必要とされる。渉外特許事務所でどの範囲/程度まで機密情報管理についての具体的なリスク管理ができるのか確認しておくべき。

5. ライセンス契約等について
中国の裁判所では原本にしか証拠力を認めない(コピーやe-mailといった複製物を以って証拠とすることはできない)/証拠として提出する物件については全て公証人による認証が必要である/十分な調査に基づかずに特許の効力の推定が働くため、特許の無効を申し立てる者(特に中国企業に特許発明を盗まれた上、中国で類似の特許を取得された外国企業)にとって推定を覆すことは困難である。したがって、現実的には侵害紛争は裁判所の決定で仲裁機関に付託されることが多い。仲裁においては上述の証拠が求められていないので訴訟に比べ解決が容易である。したがって、中国で特許を取得した外国企業は中国企業との間で実施契約を取り交わす場合、契約書に仲裁条項を盛り込むことが有効とされている。 
渉外特許事務所におけるライセンス契約等の業務の重要性が今後増すと思われる。一般に、欧米の法律事務所にトレーニーとして派遣され経験を積んだ弁理士が多い事務所を選ぶと良いとされている。

6. 不正認可について
賄賂による不正認可など特許審査にまつわる黒い噂があとを絶たない。クライアントの為とばかりに日本側が融通を暗に要求したり現地渉外特許事務所と行政庁間の不正を知りながら黙認することは、後々、不正競争防止法18条による処罰対象となりかねない。したがって、日本側はもとより渉外特許事務所の毅然とした態度とモラルが問われる。いかなる場合も法令順守を約束する渉外特許事務所を選択したい。

by R. Enomori

以上

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